世の中の不正に立ち向かう大人向けSFアクションアニメ「攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX」（Production I.G. , Inc）（※ネタバレ有） ここ60年くらいで、インターネットやいわゆるITはすさまじい勢いで発達してきました。 スマートフォンやパソコンは一人一台が当たり前ですし、気になることがあれば何でもすぐ情報取得ができます。 一方、常に情報と共にある私たちの生活は、情報漏洩や改ざん、ハッキングといった脅威にさらされているということを忘れないようにしたいものです。 ということで本日は、ネットが高度に発達し、脳の電子化が一般的になった近未来で、電子犯罪に立ち向かう秘密組織を描いた「攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX」（アニメシーズン１）の感想を書いていきます。 ※アニメシリーズの攻殻機動隊についてのみ触れてゆきますので、原作漫画を読まれた方はそちらを踏まえた上でお読みいただけますと幸いです。 また、攻殻機動隊特融の専門用語バンバン使っていきますのでご了承ください。
攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEXあらすじ
引用：https://v-storage.bnarts.jp/sp-site/ghost-in-the-shell-special/
公安９課トグサは、６年前の企業テロ「笑い男事件」の捜査員から警察内の不正疑惑の相談を受けます。
しかし、ほどなくして彼は事故死してしまいました。
９課は、残された写真から「警察内部の視聴覚デバイス不正使用疑惑」そして「警視庁内部と開発会社セラノゲノミクス」の金銭癒着を突き止め、これを週刊誌にリークします。
すぐに警察上層部の謝罪記者会が行われましたが、そこに再び笑い男が出現、総監暗殺予告を行います。
９課は、暗殺予告は事実を隠蔽したい警察内部の自作自演と推理、偽笑い男逮捕に奔走しますが、事件当日奇妙な現象が起きます。
大勢の一般人が警視総監暗殺実行のため現場に押し寄せたのです。
彼らは、誰かに指示をされたわけではなく、笑い男に感化されたと証言しました。
やがて9課は、過去の笑い男事件の真相がマイクロマシン療法を巡る不正を暴こうと１人の青年が起こした誘拐事件であったこと、その後の企業テロはTVに映った青年の模倣犯で、一部の政治家の陰謀だったことを明らかにしていきます。
事件解決後、素子はネットを通した情報共有で大人数の意思が形成されたあの奇妙な現象を、「スタンドアローンコンプレックス」と名付けるのでした。
攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX感想
攻殻機動隊は押井守監督の映画からアニメからその後のシリーズまで大好きな作品ですが、何と言ってもこのアニメ、テーマも内容も難しい（笑）
政治や社会問題と対峙する９課を中心に本編が動いていきますので難しい用語なんかが容赦なく登場します・・。
しかし勉強になりますよね・・
私も今回の感想を書くにあたり色々読みました（笑）
シーズン１では、本編である笑い男事件以外でも不正や疑獄、資本主義、電脳化技術を反対するテロリストを描くストーリーも多く、社会の黒い部分や貧富差、不条理など人間故にずっと抱えていかなければならない問題を深く取り上げていて、近未来の日本のハズなのに今の私たちの生きる社会と重なる部分がたくさんあって考えさせられます。
また、神山健治監督はJ・D・サリンジャーのファンで、笑い男事件は「ライ麦畑でつかまえて」をモチーフに展開されているのも見どころです。
今回は本編笑い男事件について触れていきますね。
事件が難しく、かつスタンドアローンコンプレックスについても私の解釈で一連の事件を整理しつつ、好きなポイントを以下にまとめました。
◆孤高なダークヒーローに感化され、最終的に多くの人が正義感を抱き奔走してゆく 攻殻機動隊好きなところ、たくさんありすぎます（笑）
語りつくせません。（笑）
ですが、２つあげるとすれば、シーズン１はそれぞれの正義感を描く一方で、国や政治といった巨大な思惑がひしめいており、中には不条理に終わってしまうこともあるというリアルな描写。
そして、笑い男という青臭いヒーロー的な思想が電波されてみんながそれを意識してゆくスタンドアローンコンプレックスという現象、この２点が私は好きです。
「アオイ」、「トグサ」、「草薙素子」の３名の個々の正義の成し方や考え方が対比みたいになっているのもこの作品を見るうえでおもしろいポイントかなと思います。
アオイと少佐は最後には同族嫌悪と言っていましたが、第三の攻殻機動隊の少佐はクールビューティーながらも社会正義とは何かについていつも考えているので、頭がよくて青臭くて小生意気な青年をみていると思わず何か言いたくなるのだと思います。
笑い男事件の真相は、アオイ青年がたまたまネット上で見つけた電脳硬化症のマイクロマシン療法に関するレポートから始まりました。
電脳硬化症に対して効果のないマイクロマシンを今も信じて治療費を払い続けている人がいること、人を救うという医療の本質から外れた様々な思惑により村井ワクチンは一部の金持ちしか使うことのできない薬になってしまっていること、などなど、アオイはそういった世の中の汚い部分を知り、聡明で正義感が強いアオイが衝動的に誘拐事件を起こしてしまいました。
そりゃあこんな事実知ったら「こんなのインチキだ！大人はみんな勝手だ！世の中腐ってやがる！」という気持ちになりますよね・・。
とはいえ、バーチャルシティアルファでも言っていましたが、誰にも顔を見られることのなかった一連のウィザード級のハッキングテクニックを持っていればこそ成せる犯行ですし、そこがある意味クールで笑い男をかっこいいヒーローたらしめています。
最終的には、セラノ社長、トグサ、素子、などが笑い男を何かしらの形で模倣するという不思議かつ痛快な展開となりました。
アオイが最終回で言った、「あの約束の守り方、最高にチャーミングだったな」というのはアオイの記憶を並列化した素子が笑い男になりセラノ氏から黒幕である薬島幹事長逮捕のための証言をするよう説得したことと解釈しています。
まったく展開がかっこよすぎて参ってしまいますね（笑）
スタンドアローンコンプレックスを私が120％監督の意思を組んで理解できているかはさておき、個人的な解釈としては、このセリフがすべてかと思います。
「すべての情報は、共有し並列化した時点で単一性を喪失し、動機なき他者の無意識に、あるいは動機ある他者の意識に内包される」(26話/アオイ) 情報はそれを知った人の意識に多かれ少なかれ作用し、多くの人が情報を共有してゆくうちに、オリジナルは失われて集団の意思、あるいはスケールが大きくなれば社会的な意志となる、と解釈しています。
ですが、アオイは最初の事件を模倣され奪われてしまい、あまつさえ別の思惑の利用のために利用されてしまいました。
しかし、TVの前で震えた手で拳銃を持ち「真実を公表してください！」と訴えるアオイは、犯罪者というよりも抗議運動を行う活動家や革命家のような姿でした。
（テロリストともとれますがそれは２期で描かれていますね・・）
アオイというオリジナルは社会のどこにもその痕跡を残さずに消えてしまったものの、不義を許してはならない、そういったものから目をそらさずに立ち向かわなければならないという思いはネットで電波され、多くの人の心に影響を与え、６年後の総監暗殺現場に大勢が押し寄せるという現象を招いたのだと思います。
攻殻機動隊は、今のようにITが発達したからこそ大きな問題提起をしてくれる作品です。
ネットで何でも情報取得できる世の中では、目にした情報から影響を受けやすいなと常々感じます。
一見便利ですが、作中で「個性の喪失」をアオイが危惧していたように、この現象は自分のオリジナリティの消失にもつながる危険性があります。
上っ面だけの言葉だけで情報を取得して本質を思考しなくなる、自分なりの意見を持たなくなる、と言い換えてもいいかもしれません。
しかし、少佐も言っていましたが、「好奇心」つまり自分で興味をもって考え続ける力を継続的に鍛えればどんなに技術が発達しても、例え人間と機械の境界線があいまいになったとしてもそれは恐れなくてもいいのではないか、という結論がでました。
比較対象として、まだまだ学習盛りのタチコマは、知的好奇心旺盛で、逆に情報を並列化しても、個体ごとに違う経験を自分なりに解釈したり、自分で調べて自分なりに考えて仲間たちとディスカッションしてアウトプットしたり、参考になるなと思った意見を自分の中に取り入れる、といった好奇心を原動力に個性を獲得しました。
子供（生まれたてのAI）だからある意味脳みそが柔らかい（脳みそないけど）、そういう柔軟性が大切、という意味の対比としてアオイは「僕の脳はすでに硬化し始めている」と言っていたのもおしゃれだなーと感心します(笑) 情報社会故に「自分に都合のいいことばかりに流される」「貧富差」みたいな問題が、笑い男事件の理論を引き継ぎつつ２期につながるのも魅力的！(笑)
ちょっと脈絡ないですが本日はここまで・・・。
汗 今回は、「攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX」についてでした。
今回の記事を読んで「もう一回見直したい」「久しぶりに見ようかな」「友達にすすめてみよう」と思っていただけたなら幸いです（笑）
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