独特の世界観で人間の心のありさまを描く大人向け和製ホラーアニメ

「モノノ怪」(東映アニメーション)(※ネタバレ有)

この前、年末の短期バイトをしたのですが、単発で行ったので結構荒っぽい扱いをされました。(笑)
前は会社員もしていたので大抵の不条理や悪意みたいなものにはそれなりに抗体がある自信があったのですが、帰ってきて心身ともにぐったりしてしまいました。

心無い一言や行動、時には信じていた人間からの傷つく一言なんかを聞くと、なにか心に黒いドロドロしたものが溜まっていくようで良くないなーと私も常々思います。

人間社会って難しいです。

本日は、不思議な絵柄と世界観で、人ならざるモノをモチーフとしながらも、人の心や思いを描いているオススメ作品「モノノ怪」の感想を書いていきます。

モノノ怪あらすじ

引用:https://www.mononoke-anime.com/

モノノ怪を斬れる退魔の剣を持った謎の薬売りが、妖気あるところに現れモノノ怪を斬る物語。

彼の持つ退魔の剣は、モノノ怪の形(すがたかたち)、真(ことのありさま、事実)、理(こころのありさま)の3つがそろって初めて鞘から抜くことができる、なんともめんどくさい代物です。

初回作品「化猫」の続編となる本作では、座敷童、海坊主、のっぺらぼう、鵺、化猫、の形・誠・理を明かし、これを斬ります。

座敷童編 かつて遊郭だった宿屋を舞台に、許されぬ恋で身重となった女と、遊女の中絶のため生まれることができなかった赤子のモノノ怪、座敷童を巡る物語。

海坊主編 怪しい海域に迷い込んだ船を舞台に、乗り合わせた乗客と僧侶、そして生贄となった僧侶の妹を巡る物語。

のっぺらぼう編 武家に嫁ぐも家族殺しの罪で死刑となった不運な女お蝶と、姿を変えるモノノ怪、のっぺらぼうを巡る物語。

鵺編 夜な夜な組香が行われる京都のとある場所を舞台に、瑠璃姫の婿候補としておとずれた4名の男と、香木「東大寺」を巡る物語。

化猫編 事故死した新聞記者の女がモノノ怪となり電車を襲う。

乗り合わせた5名はそれぞれ事件に関わっていた人物たち。時代を超えた化猫を巡る物語。

モノノ怪感想

モノノ怪は和紙を使ったアニメーションや独特の表現にハイカラな絵柄など、まるで絵巻物を見ているかのような美しいアニメーションとシュールで不気味な演出が人気となったアニメです。

モノノ怪がモチーフですが、それを斬るために明かされる様々な人間ドラマがまた見ごたえがあります。

あと女性はみんな一様に好きかと思いますが、薬売りがなんとも男前で声優さんも相まって本当に素敵ですよね(笑)

モノノ怪ごとにストーリーが分かれていますので、その中の1つ「のっぺらぼう」を取り上げて今回は好きなポイントを描いていきますね。

(本当は全部書きたいのですが書いてみたら大変な文字量でしたのでまとめましたすみません。汗)

他人の期待に応えるために自分を殺していたお蝶さんの物語は 現代人にも通じるものがある 本作の6~7話の2話構成で描かれた「のっぺらぼう」が個人的にはお気に入りです。

どれも大変魅力的なのですが、個人的に一番感情移入できたし、こういう人以外とたくさんいるだろうなと思ったのが「他人の期待に応えようとして心を押し殺してきたお蝶さん」でした。

この物語は、実はそんなお蝶がモノノ怪になってしまっていたというのが結末でしたね。

自分の本音を言えず心が壊れてしまうまで頑張ってしまう、現実ではこういった状態が長く続いて委縮してしまう人もいると思います。

色々この後書いていきますが、のっぺらぼうの話は私たちの生きる社会へのメッセージを感じる物語でした。

幼少から母親に「位の高い武家に嫁ぐため」の教育を受けてきたお蝶は、「大好きなは母親のため」と厳しい稽古にも耐えていましたが、心の底で本当は外に出て遊びたいな、と思っていたようでだんだん心が乖離してしまいます。

彼女は自覚がなかったかもしれませんが、「お母さんが好きだから、期待に応えたい」というのは本心ではなく、自分に言い聞かせて状況を耐えるための建前になってしまっていました。

結婚するときも、あからさまに嫌味で下品な武家一家を前に、娘の気持ちそっちのけで自分の念願が叶ったと頭を下げる母親を見て、お蝶の心はまた分裂してしまいます。

案の定最低な一家で苛められ、辛くなったお蝶はとうとう今まで分裂させた本心がモノノ怪となってしまい、狐面の男を操り一家を仮想の世界で殺して一次的にその場を乗り切る、という奇妙なストレス発散を初めてしまいました。

「あの感触のおかげで生きてこられた」と言っていたので、押し殺していたイライラが頂点に達しては仮想世界で一家を殺して戻るという行動を繰り返していたのだと思います。

ですが、一時しのぎに過ぎないこの仮想殺人は、繰り返せば繰り返すほどに「ここから逃げ出したい」と思う自分の本心を抑え込んで、殺していることと同義でした。

薬売りに「こんな笑いごとのために一体何人(自分を)殺したんです?」と諭され、最終的に自分の欲望を叶えるために娘を縛り付け、娘の努力も本音も見てあげない、酷い人間ばかりの家に嫁ぐ娘の気持ちを顧みない、あんな親の期待に応えようとしてこんなにボロボロになって「私、ばっかみたい」と出た一言が、お蝶が初めて口にした本心でした。

最期は、家には誰もおらず、武家家族の罵声だけが響き渡る、というシーンで終わります。

ほとんど精神世界の描写なので解釈は人それぞれですが、お蝶はとっくに現実には存在していなかったのかもしれません。

魂がとらわれていただけだったとしても、あの場所から自由になれたのだと思います。

もしくは、お蝶の中で強烈なトラウマとなっていた一家の罵声でしたが、トラウマ故に思い込みで誇張されてしまっていた、逃げて自由を手にするぞという意思と勇気があれば状況を打破できる、という意味を含めてあのような終わり方だったのかもしれません。

今までの、本音を隠し本心と違うセリフを言いながら生きてきたお蝶を薬売りは「芝居の途中だ」と表現し、アニメでも一貫して能やお面のモチーフが使われていました。

各エピソードでもそうですが、この比喩表現が皮肉かつおしゃれでたまりません。 アニメ、モノノ怪の素晴らしいところです!(笑)

色んな家庭の人がいると思いますが、自分が子供の頃に成しえなかった夢を子供に託す親っていますよね。

とか、よくわかんないけど「とにかくいい学校に入れる」「とにかくいい会社に就職する」というのを美徳とする風潮は一定残っているとこをもあると思います。

私は子供を持ったことがないので批判覚悟であえてこう言いますが「子供も一人の人間」ですので、親から教訓がてらオススメはしても、最後は個人で意思決定させるのが本当の思いやりだと思うのです。

(どうせ大人になったらそうやって生きていかないといけないですし) 薬売りは、「なぜあの場所から逃げ出さなかった?」と問いますが、すでに自分の心があべこべになってしまっていたお蝶は本心を見失い、逃げたいという自分の思いを行動に移せずにいました。

子供の時の強い抑圧により、辛く苦しい状況から逃げ出す意思や勇気を持てなくなるほどにすり減っていたのだと思います。

しかし、人間は苦しいと思う状況から逃げてもいいと思いますし、むしろ生きながらえていくらでも幸せを手にできる可能性が誰にもあるのですから、自分からとどまらずに逃げていいのです。

逃げというか私から言わせてみればむしろ勇気ですね、自分で決めて頑張って実行することは賞賛されるべきものです。

何より、他人に言われて従うよりも、自分で考えて行動することの方が、結果が失敗だったとしても、自分で考えて実行したことなので納得度が高いです。

覚悟一つでそこから飛び出す、不幸な今の環境を捨て、今より楽しい未来を掴もうとする勇気は、私たちが生きている現実でもとても大切だと思います。

けっして逃げではないです。

あくまで個人的解釈ですが、そういったメッセージが込められたアニメでもあると思っています。

今回は、「モノノ怪」についてでした。 今回の記事を読んで「もう一回見直したい」「久しぶりに見ようかな」「友達にすすめてみよう」と思っていただけたなら幸いです(笑)

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